はじめに
お店をオープンして最初の数ヶ月は「とにかく忙しい」。
仕込み・接客・発注・経理など、日々の業務に追われる中で「数字管理」は後回しになりがちです。
しかし、経営を安定させるには数字の把握が欠かせません。
数字を見ずに経営するのは、地図を持たずに旅をするようなもの。
この記事では、飲食店を長く続けるために必要な数字管理の考え方と、利益改善の実践ステップを解説します。
1. 飲食店経営で把握すべき3つの数字
① 売上高
1日・1週間・1か月単位で必ず記録する。
日別の「客数 × 客単価」で構成を確認するのが基本です。
| 指標 | 意味 | 改善アプローチ |
|---|---|---|
| 客数 | 来店人数 | 集客施策・回転率向上 |
| 客単価 | 1人あたりの平均注文額 | メニュー構成・セット販売 |
② 原価率
「食材コスト ÷ 売上 × 100」で算出。
業態別の目安は以下の通り。
| 業態 | 原価率の目安 |
|---|---|
| 居酒屋 | 30〜35% |
| カフェ | 25〜30% |
| 定食屋 | 35〜40% |
| ラーメン | 30〜35% |
理想は、月単位だけでなくメニュー別でも原価を把握すること。
原価率の高いメニューを値上げするか、材料構成を見直すことで利益を改善できます。
③ 人件費率
「人件費 ÷ 売上 × 100」で算出。
飲食店では 25〜35% が目安です。
スタッフ数が多すぎたり、営業時間が長すぎると、利益を圧迫します。
時間帯別の売上に対して人員配置を最適化することが重要です。
2. 粗利益を意識した日次・月次管理
粗利益の基本式
粗利益 = 売上 − 原価 営業利益 = 粗利益 − 人件費 − その他経費
日次管理のポイント
- 前日比・前年同日比の売上
- 客数と客単価の変動
- 原価率と人件費率のチェック
月次で見るべき指標
| 指標 | 理想値 | コメント |
|---|---|---|
| 原価率 | 30〜35% | 変動が大きい場合は発注やロスを確認 |
| 人件費率 | 25〜30% | 時間帯別の配置見直し |
| 営業利益率 | 10〜15% | 最終的な収益の健康度を示す |
3. ロス(廃棄・過剰在庫)を減らす
ロス管理は「利益改善の最短ルート」です。
ロスが発生する主な原因
- 発注量が多い(予測精度が低い)
- 仕込み過剰(天候・曜日変動を無視)
- 廃棄ルールが曖昧(記録が残らない)
対策
- 週ごとに「仕入量 vs 売上」を比較
- 廃棄量を数値化し、原因を特定
- 人気メニュー中心の仕入に切り替える
4. 数字を“見える化”する仕組みをつくる
手書きノートでは限界がある
エクセルや紙での集計ではリアルタイム性がなく、分析に時間がかかります。
デジタル化することで、日々の傾向を素早く把握できるようになります。
ツール化のメリット
- 売上・仕入・在庫を自動集計
- 原価率・利益率を自動計算
- 異常値(ロス・高原価商品)をアラート通知
これにより、「感覚経営」から「データ経営」へ移行できます。
5. 利益改善の具体的なステップ
1️⃣ 現状把握
→ 売上・原価・人件費の3指標を月次で整理
2️⃣ 課題特定
→ 原価率が高い?人件費が重い?ロスが多い?
3️⃣ 仮説と対策
→ メニュー改定/仕入見直し/シフト調整
4️⃣ 効果検証
→ 翌月に再計測し、改善サイクルを回す
6. 数字がわかると経営判断が変わる
例:A店(改善前)
- 売上:250万円
- 原価率:38%
- 人件費率:34%
- 営業利益率:5%
改善後(3か月後)
- 売上:270万円(+8%)
- 原価率:33%
- 人件費率:28%
- 営業利益率:14%
数字の“見える化”と小さな改善の積み重ねで、利益率は2〜3倍に改善することも可能です。
7. よくある質問(FAQ)
Q. 開業したばかりでも原価率を意識すべき?
→ はい。最初から「正しい原価率」を把握しておくことで、利益構造を崩さずにメニューを展開できます。
Q. 人件費を削るとサービス品質が落ちませんか?
→ 削るのではなく「配置の最適化」が重要です。時間帯別の売上に合わせて調整しましょう。
Q. ロスを減らすには?
→ 在庫管理をルール化し、日次で「廃棄・残量」を記録することが第一歩です。
まとめ
飲食店経営において「数字を把握すること」は、経験や勘よりも強い武器です。
日々の数字を見える化し、課題を特定して改善を重ねることで、利益率は必ず上がります。
- 売上・原価・人件費の3指標を毎月チェック
- ロス削減と配置最適化で利益を確保
- 数字を「見るだけ」でなく「活かす」習慣を

