はじめに
飲食店を開業する際に大きなハードルとなるのが「物件選び」と「初期投資」です。
特にスケルトン物件から内装や厨房設備を整える場合、数百万円から1,000万円以上のコストがかかることも珍しくありません。
そこで注目されるのが「居抜き物件」です。前テナントが使っていた内装や設備を引き継げるため、初期費用や工期を大幅に抑えられる可能性があります。
ただし、メリットばかりではなく、老朽化や契約条件のリスクも存在します。
この記事では、居抜き物件のメリット・デメリットを整理し、失敗しない物件選びのポイントを徹底解説します。
居抜き物件とは?
居抜き物件とは、前の入居者が使っていた 内装や厨房機器、家具などが残された状態で引き渡される物件 を指します。
飲食業界では特に多く、居酒屋・ラーメン店・カフェなどの小規模店舗でよく見られます。
これに対し、スケルトン物件は「内装・設備がすべて撤去され、コンクリートむき出しの状態」の物件です。スケルトンは自由度が高い一方で、工事費用が高額になります。
居抜き物件のメリット
1. 初期費用を大幅に抑えられる
最大の魅力はコスト削減です。厨房機器(冷蔵庫、換気扇、グリル台など)や客席の家具をそのまま利用できれば、数百万円単位で費用を抑えられることがあります。
2. 開業までの時間を短縮できる
既存の内装や設備を活用できるため、スケルトンに比べて工事期間が短く済みます。
物件契約から数週間〜1か月程度で開業できるケースもあります。
3. 立地の実績が分かる
前テナントの業態や営業期間から、その立地の「勝ち筋」や「課題」を推測できます。
例えば同じラーメン業態で数年続いた物件であれば、客層や売上ポテンシャルをイメージしやすいでしょう。
4. 設備投資の負担を減らせる
業務用冷蔵庫や製氷機など、単体で購入すると数十万円かかる設備を引き継げれば、大きな節約になります。
居抜き物件のデメリット
1. 設備が老朽化している可能性
見た目はきれいでも、冷蔵庫の冷えが悪い、換気扇が異音を立てるなどの不具合が後から見つかることがあります。
修理や買い替えが必要になると、結局コストがかさむことに。
2. レイアウトが業態に合わない
前テナントが焼肉店だった物件をカフェに使うなど、レイアウトが合わないケースでは改修が必要になります。
動線が悪く、席数や厨房配置が自分のコンセプトに合わないと、運営に支障をきたします。
3. 造作譲渡料が発生する
居抜き物件では、前テナントに「造作譲渡料」を支払う必要がある場合があります。
数十万円〜数百万円かかるケースがあり、相場より高額な場合は注意が必要です。
4. 契約条件が複雑
「原状回復義務」や「解約条件」によって、退去時に思わぬ費用が発生することもあります。
不動産会社やオーナーとの契約条件は必ず確認しましょう。
居抜き物件選びのチェックポイント
1. 設備の状態を確認
- 厨房機器の動作確認(冷蔵庫、製氷機、換気扇など)
- グリストラップの清掃状況
- 配管や電気設備に問題がないか
2. 造作譲渡料の妥当性
「同エリアの相場」と比較することが大切です。設備の年数や状態を考慮し、納得感のある金額かどうかを判断しましょう。
3. 業態適合性
自分がやりたい業態(ラーメン、居酒屋、カフェなど)が既存レイアウトで成立するか確認しましょう。
排気設備やダクトの位置によっては、大幅な追加工事が必要になることもあります。
4. 契約条件の確認
- 原状回復義務はあるか
- 解約時の違約金はどうなっているか
- サブリースや転貸の条件は?
法律や契約に不慣れな場合は、専門家(弁護士や不動産コンサル)に確認してもらうのが安心です。
居抜きとスケルトン、どちらが向いている?
居抜き物件が向いている人
- 初期費用を抑えたい
- できるだけ早く開業したい
- 前テナントと同じような業態で営業したい
スケルトン物件が向いている人
- 内装デザインや動線に強いこだわりがある
- ブランドを長期的に展開したい
- 設備をゼロから選びたい
開業までの流れ(居抜き物件の場合)
- 物件情報収集(不動産サイト・専門業者)
- 内見・設備チェック
- 契約条件交渉(造作譲渡料・原状回復義務など)
- 資金計画の再調整
- 保健所へ事前相談
- 必要に応じて改修工事
- 営業許可申請
- プレオープン → グランドオープン
スケルトン物件に比べて 2〜3か月短縮 できるケースもあります。
よくある質問(FAQ)
Q. 居抜き物件で開業するときに必須の資格・許可は?
→ スケルトンと変わらず「食品衛生責任者」と「営業許可」が必須です。深夜営業や酒販免許が必要な場合は別途申請が必要です。
Q. 造作譲渡料の相場はどのくらいですか?
→ 一般的には数十万円〜300万円程度ですが、立地や設備内容によって大きく変わります。必ず相場と比較しましょう。
Q. 居抜き物件でよくある失敗例は?
→ 設備が老朽化して追加工事が必要になったり、業態不一致で使いづらいレイアウトだったケースです。結果的にスケルトン以上に費用がかかることもあります。
まとめ
居抜き物件は「初期費用を抑え、短期間で開業できる」という大きなメリットがある一方で、「設備老朽化」「業態不一致」「造作譲渡料」「契約条件の複雑さ」といったリスクもあります。
失敗を避けるためには、
- 設備チェックを徹底する
- 造作譲渡料の妥当性を確認する
- 業態適合性を見極める
- 契約条件を専門家に確認してもらう
これらを意識することが大切です。
自分の業態や資金計画に合わせて「居抜き」か「スケルトン」かを比較し、最適な選択をしましょう。



