はじめに
飲食店を開業しようと思ったときに多くの人が悩むのが「何から始めればいいの？」「どのくらいの期間が必要？」という点です。
資金調達、物件探し、資格・許可取得、内装工事、スタッフ採用、宣伝準備など、やることは多岐にわたります。
これらをスムーズに進めるには、全体の流れを理解し、スケジュールを立てて順序よく進めることが大切です。
この記事では、飲食店開業までに必要な準備を時系列に沿って整理し、それぞれのステップでやるべきことや注意点を解説します。
初めての開業でも、この記事を参考にすれば「見通し」を持って準備を進められるはずです。
開業6か月前〜3か月前：コンセプトと資金計画
業態・コンセプトを固める
まず最初に取り組むべきは「どんな店にするか」という業態・コンセプトづくりです。
ラーメン店、居酒屋、カフェ、バルなど業態ごとに必要な設備や客層、立地条件が異なります。
ターゲット顧客を明確にし、競合との差別化ポイントを整理することが重要です。
市場調査
- 出店予定エリアの人通りや競合状況を調査
- 平日・休日・昼・夜など時間帯別の客層を把握
- 想定売上を現実的に見積もる
資金計画
飲食店開業には数百万円〜1,000万円以上の資金が必要です。
自己資金で賄うだけでなく、日本政策金融公庫や銀行からの融資を組み合わせるのが一般的です。
この時期に「創業計画書」を作成し、金融機関に相談を始めておきましょう。
開業3か月前〜2か月前：物件探しと工事計画
物件探し
物件選びは成功のカギを握ります。
- 人通りが多くターゲット顧客が集まりやすい場所か
- 家賃が売上見込みに対して適切か
- 内装工事に適した構造になっているか
物件契約時には、保証金・礼金・仲介手数料などまとまった資金が必要になるため、資金繰りも考慮して進めましょう。
保健所への事前相談
店舗の内装は保健所の基準を満たさなければ営業許可が下りません。
物件を決めたら、必ず工事前に保健所へ相談し、シンクや手洗い場の数・換気設備・調理スペースの広さなどを確認します。
設計・施工業者との打ち合わせ
この時期に施工業者を決定し、工事スケジュールを詰めていきます。
工期は通常1か月前後ですが、繁忙期は遅れることもあるため余裕を持つことが大切です。
開業2か月前〜1か月前：資格取得・工事開始
食品衛生責任者の取得
飲食店には必ず1名以上の食品衛生責任者が必要です。
調理経験がなくても1日の講習で取得可能で、費用は1万円前後。早めに講習日程を確認し、受講しておきましょう。
防火管理者（必要な場合）
収容人数が30人以上の店舗では防火管理者の選任が義務付けられています。
こちらも2日間の講習で取得できるので、該当する場合は早めに受講しておきましょう。
工事開始
- 厨房設備の設置
- カウンターやテーブルの施工
- 電気・ガス・水道の工事
工事中に並行して、メニュー開発や仕入先との契約交渉を進めると効率的です。
開業1か月前〜2週間前：各種許可申請と採用
保健所への営業許可申請
工事が完了したら、保健所に営業許可を申請します。
検査日程を調整し、必要書類を提出しましょう。
消防署・警察署への届出
- 喫煙室を設置する場合 → 保健所や自治体に届出
- 深夜0時以降に酒類を提供する場合 → 警察署に「深夜酒類提供飲食店営業」の届出
- 収容人数が多い場合 → 消防署に「防火管理者選任届」
スタッフ採用とトレーニング
スタッフは開業の1か月前には採用して研修を開始するのが理想です。
接客マニュアルやオペレーションを事前に準備し、プレオープンに備えましょう。
宣伝準備
- チラシやポスターの制作
- SNSアカウントで情報発信開始
- 地域メディアやグルメサイトへの掲載依頼
開業2週間前〜直前：最終準備
保健所検査と許可証交付
保健所の職員による検査を受け、問題がなければ営業許可証が交付されます。
これがなければ営業できないため、開店日を逆算して必ず余裕を持って準備しましょう。
設備・備品の最終準備
- レジやPOSシステムの設置
- テーブルウェアやカトラリーの搬入
- 消耗品（おしぼり、ナプキン、洗剤など）の準備
プレオープン（レセプション）
本番前に友人や知人を招いてプレオープンを行い、実際の運営をテストします。
想定以上に時間がかかる作業やトラブルが発生することもあるため、この段階で改善点を洗い出すことが重要です。
開業当日
いよいよグランドオープンです。
初日の売上や来客数を記録し、想定との差を分析します。
SNSや口コミサイトでの反応を確認し、積極的に対応しましょう。
初動でファンを獲得できるかどうかが、その後の集客に大きく影響します。
開業までのスケジュールまとめ表
| 時期 | 主な準備 | 取得・申請 |
|---|---|---|
| 6か月前〜3か月前 | 業態コンセプト決定、市場調査、資金計画 | 創業計画書作成、金融機関相談 |
| 3か月前〜2か月前 | 物件契約、施工業者決定、内装計画 | 保健所へ事前相談 |
| 2か月前〜1か月前 | 工事開始、メニュー開発、仕入先決定 | 食品衛生責任者・防火管理者取得 |
| 1か月前〜2週間前 | スタッフ採用・研修、宣伝準備 | 保健所営業許可申請、警察署・消防署届出 |
| 2週間前〜直前 | 設備搬入、レセプション | 保健所検査・許可証交付 |
| 開業当日 | オープン、初日運営 | - |
よくある質問（FAQ）
Q. 開業準備にはどのくらいの期間が必要ですか？
→ 一般的には 6か月前後 が目安です。資金調達や物件探しに時間がかかると、1年近く準備するケースもあります。
Q. プレオープンはやった方がいいですか？
→ 必須ではありませんが、実際の営業をシミュレーションでき、改善点を事前に洗い出せるため非常におすすめです。
Q. 採用はどの時期から始めるべきですか？
→ オープン1か月前には採用を完了し、少なくとも2週間は研修期間を設けるのが理想です。
Q. 許可が下りるまでにどのくらいかかりますか？
→ 保健所に申請してから許可証交付までは通常1〜2週間。余裕を持って申請しましょう。
まとめ
飲食店開業には多くの準備が必要ですが、時系列で整理すれば混乱せず進められます。
- まずは コンセプト・資金計画
- 次に 物件探し・工事計画
- そして 資格取得・許可申請・採用・宣伝準備
- 最後に プレオープン → グランドオープン
開業はゴールではなくスタートです。
オープン後も日々改善を重ね、長く愛されるお店を目指しましょう。
